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男性の家事と環境問題

integratedeconomy

更新日:2023年2月9日




男性が家事や育児に参加することはジェンダー平等の点から見て大事なことですが、それだけでなく、環境問題の解決にとっても大事・・・なんて考えたことはあるでしょうか?


今回は、環境破壊を招いたのは人間の意識が「生命(いのち)の世界」から離れてしまったから、という考え方をご紹介しながら、男性の家事参加の重要性についてお話しようと思います。



生命の世界を見ない経済


サイトの「歴史の窓-第3章」でもお話ししましたが、今日のすさまじい環境破壊は、18世紀後半の産業革命から始まる「西洋近代」という時代に入ってから起こっています。産業革命は機械技術が発達して巨大化し、工場で大量にモノを作ることができるようになったことを指します。そして出来上がった製品をできるだけ自由に売り買いしようとする資本主義経済も同時に発達したのです。そして圧倒的な物質的豊かさを背景に、この西洋的な近代化は世界に拡がっていきました。


この科学技術や経済の基にあるのが「機械論的自然観(世界観)」です。「機械論的自然観」は、自然は生命のない単なる物質の集まりで、一定の法則に従って動く精密機械のようなものと考えるもので、16世紀の科学革命によって生み出されました。 


この機械論の台頭によって、それ以前にあった「神性をもつ生命体」という自然観は消えてしまいました。つまり、自然が「単なる物質」と考えられるようになったことで、人間の横暴なまでの自然利用が始まったというわけです。



自然と共生する経済を探究した玉野井芳郎という経済学者は、資本主義は生命のない材料を使い機械的に物を作る工業の世界をもとにしたもの、つまり生命の世界とは関わりのない経済だと言いました。資本主義という経済の中では、自然は生命のない「資源」や「ごみ捨て場」でしかないのです。


こうして、現在に至るまで経済には自然を生命体と見る視点がなく、その中で生きている私たちも、自分たちが「生きもので自然の一部」という意識が希薄なまま生きています。



家事は生命の世界


玉野井氏は、自然の他にもうひとつ、資本主義経済を支えるものでありながら理論から外された「生命の世界」があると言います。それは家事労働です。


たしかに家事は「いのちをケアする仕事」です。ケアという言葉には面倒をみる、気配りをする、メンテナンスをする、などの意味があります。生きるための食事を作り、生活空間を快適にするために掃除や洗濯をし、子どもを育て、病人や老人の世話をする・・・。


つまり家事は人間が生きていくための最も重要な仕事、まさに生命に密着した仕事だと言えるのです。




近代化と性別役割分業


実は「男は仕事、女は家事」という性別役割分業は産業革命になって確立した意外に新しいものなのです。それ以前は仕事と家庭が同じ場所で行われる家内制工業が多かったので、男女の役割ははっきりとは分れていませんでした (a)。日本でも「女は家を守るのが仕事」となったのは19世紀。西洋的近代化をめざした明治政府が、武家の家制度を基にしてつくった新しい国家像の中においてでした (b)。どちらの場合も、家父長制という男性優位の社会の中で男性がつくり出した制度が性別役割分業だったのです。


この性別役割分業によって、男女の仕事は以下のようにスッパリと分けられました。


A) 「モノを作っておカネを稼ぐ仕事」 → 男性

B) 「家事=いのちをケアする仕事」 → 女性


ただ当時の男性には、女性が担う家事のおかげで自分はエネルギーを補給し、労働者としてまた仕事に行くことができる♪、というような前向きな考え方はありませんでした。なにしろ男性優位の家父長制社会ですから、家の外で男性が行う A) は価値があるけれど、B) は「女なら誰でもできる、あたりまえのもの」として価値を認めなかったのです。そこには女性とその労働を下に見る意識がありました。



生命の世界から切り離された男性


こうして性別役割分業は男性を「いのちをケアする仕事」から切り離しました。そして男性は資本主義経済の中で、その力を「モノづくり」と「カネ儲け」という非生命の仕事に集中していくようになるのです。


このように、経済を動かす男性が生命世界と切り離されてきたことが今日の自然破壊につながっているという考え方は、私には理解できます。知らないことを経済に取り入れることはできませんから。


たとえば企業にとってホウレン草はホウレン草で、どれも同じです。少しでもたくさん買ってもらうために、場合によっては生産コストの安い海外で作らせて安く売ることもあります。けれども日々の食卓を準備する者にとって、スーパーで買うホウレン草と、近所の農家から買う朝採れホウレン草の違いは歴然としています。新鮮さに加え、もしそれが有機栽培ならさらに安心して食べられます。栄養価も高いので体に良い上、畑の生態系も守られます。


生命の視点をもつ経済と、生命の視点をもたない経済では、作り方や作るものの結果が違うのです。


ですからぜひ男性にも(そして最近は女性にも)家事に積極的に参加して頂きたいのです。人が生まれ、育ち、働き、老いて死んでいく・・・そのプロセスの現場である家庭の仕事にきちんと向き合うことで、見える世界は変わってくるのではないでしょうか。




主な参考文献 → 私の本棚(ブログ)
(a)『家事労働と資本主義』
(b)『闘争するフェミニズムへ』

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