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「経済成長」という男性性②

更新日:2021年8月21日


地球は有限


あたり前のことですが、地球は有限です。地球がもっている資源だけでなく、自然のもつ回復力や生命の扶養力にも限界があります。


数々の科学的データは、人間活動が地球の回復力や扶養力をすでに超えていることを示しています。詳しくは「エコロジカル・フットプリント」や「プラネタリー・バウンダリー」を調べてみてくださいね。


このために、たとえば異常気象や地球温暖化のような環境問題が深刻化しているのです。



それでも捨てられない「経済成長」路線


有限な地球で永遠の経済成長はあり得ない」「経済成長を続ければ自然環境は破綻する」ということはずいぶん前からわかっていました。1972年にはローマクラブが『成長の限界』を発表して警告していますし、1992年の国連地球サミットでも「先進国の行き過ぎた生産と消費が環境破壊の主原因」と指摘されています。2007年には元アメリカ副大統領のアル・ゴア氏とIPCC(「国連気候変動に関する政府間パネル」)がともに、「経済成長」によって増え続ける二酸化炭素と地球温暖化の因果関係を科学的データをもとに啓発した功績でノーベル平和賞を受賞しています。


こうした警告を信じなかったり、無視したり、「技術革新で解決できる」として真剣に向き合ってこなかったのが主に先進国とその産業界です。近年、世界各地で異常気象が多発するようになって、やっと渋々認め始めたというところでしょう。


それでもトランプ大統領は「地球温暖化はでっちあげだ!」と言っていましたし、日本も常に「経済成長」をめざしていることに変わりはありません。SDGs(持続可能な開発目標)でさえも、第8目標に「経済成長」を入れているくらいです。


この「拡大!拡大!、もっと大きく!」という「経済成長」は、もはや狂信的とさえ言えます。



「経済成長」という男性性


長年「環境文明」を探究してきた加藤三郎氏は、環境破壊の原因として

 *「資本主義」 *「科学技術」 *「欲望」  の三つを挙げています


そして「資本主義は本質的に拡大・成長志向(つまり経済成長)」、「科学技術は進化・拡大主義」と批判的に述べています。

彼の言う「欲望」の中で、私は特に「権勢欲(支配・覇権)」を挙げたいと思います。


「拡大」「成長」「直線的(な進歩)」「権勢欲(支配・覇権)」はみな男性性です


このサイトの「歴史の窓-ヨーロッパの男性性の歴史 第3章」でお話ししたように、ヨーロッパ近代に成立した資本主義と科学技術は、ともに家父長制に基づいたハイパー男性性の産物です。この意識・思想を共有する資本主義と科学技術が一体となって作ってきた社会経済ですから、男性性の意識から逃れられないのです。



「覇権」を求める意識


なかでも「経済成長」に固執する究極の理由は「覇権を求める意識」ではないかと私は考えます。おカネがあり、たくさんのモノ(特に武器)を持つ者が世界を支配する・・・そういう世界をつくってしまったからです。

現在GDPの規模が1位のアメリカと2位の中国の対立が激しくなっていますが、これもひと言で言えば世界の政治と経済の主導権(覇権)をめぐる争いでしょう。


そして、一度手に入れた「先進国の地位」と「世界への影響力(支配力)」そして「おカネ」を失うことを恐れる先進国(とその産業界)は、これではいけないとわかっていても(認めない人たちもいますが)「経済成長」にしがみつくのです。


途上国も、国際社会での発言力を上げるのは経済力(おカネ)だと思っても不思議はありません。



「経済成長」は本当に必要?


国民を幸せにするには「経済成長」が必要だと言う人たちはたくさんいます。雇用を生むため、給料を上げるため・・・など。企業を儲けさせ「富める人がもっと富めば、それがしたたり落ちるように貧しい人にも自然に富が浸透し、経済全体が良くなる」というトリクルダウン理論が長年「経済成長」を正当化していました。またモノやサービスが多いことが幸せだと思われてきました。


けれども少なくとも先進国では、この理論はすでに成り立たなくなっています。たとえば世界第3位のGDPを誇り、まがりなりにも「経済成長」している日本で、平均年収が低下し非正規労働者が増加するなど、雇用の質が下がり続けているのはその例です。また2019年の幸福度調査によると、調査した世界156か国中日本は58位で、順位は年々下がっています。たくさんのモノに囲まれていても幸せを感じない人が増えているのです。


「自分たちは貧しい99%だ」として「1%の金持ち」との格差に抗議する人々(アメリカ)  出典)look2remember

働いても働いても貧しいままの「ワーキングプア」問題、富める者と貧しい者の格差の広がり・・・こうしたひずみが世界規模で広がっており、環境破壊の問題と合わせて 資本主義を疑う声が高まっています。


 


将来の世代が幸せに生きられるような地球環境を残すためには、まず経済規模を地球の回復力と扶養力内に収まるまで「縮小」しなくてはなりません。そしてそこまで縮小したなら、それを維持する(「定常経済」と言います)ことが大事です。


モノやサービスを今のように安くたくさん買えなくても満足できる世界に移行する・・・それは「何が豊かということか」「何か幸せということか」を問い直すことにもなるでしょう。生産する側も買う側も、おカネ以外の価値を経済に反映させていくことになるのだと思います。

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